夕暮れや都の人も秋の顔
桔梗の花咲時ポンと言そうな
行秋に袖も留るや女郎花
狩人に立ふさがるや女郎花
これこそは月をあるじや水の色
なかれても底しづかなり水の月
三日月にひしひしと物の静まりぬ
待つ宵やしびれまじなふ草は何
あかるふてわからぬ水やけふの月
うら町の鼾あかるしけふの月
ともし火も置わするるやけふの月
細道へつるの往来や瓜名月
三日月の頃より待し今宵かな
水雪は萩ばかりにや今日の月
名月やそのうらも見る丸硯
名月や何所までのばす富士の裾
名月や眼に置ながら遠歩行
名月や小松原より松一木
はからずも琴きく雨の月見哉
何着てもうつくしうなる月見哉
月見にも陰ほしがるや女子達
十六夜の闇をこぼすや芋の露
十六夜や囁く人のうしろより
たち尽すものはかかしぞ後の月
とり残す梨のやもめや後の月