こぼしてはその葉のひろふ萩の露
露に染て皆地にかへる萩の花
これほどな穂にひしたたぬ薄かな
秋風のいふままに成る尾花かな
晩鐘に幾つか沈む尾花哉
角ぐみもいつしか解てあしの花
風は風に心も置ずあしの花
かたびらの襟にはくさし荻の音
穂に出てや二見に通ふ荻の音
蘭の香やなじみでもない草にまで
蘭の香やゆかし道に問あたり
蘭の香や手にうけて見るものならば
鶏頭やならべてものの干て有
鶏頭やまことの声は根に遊び
きくはたやいかにすぐれて残る菊
ひと色の野菊でしまふ心こそ
十日にはまさりかほなる野菊かな
花や葉に恥しいほど長瓢
行秋の声も出るやふくべより
まつ茸やあれもなにかの雨やどり
ゆく秋や持て来た風は置ながら
行秋やひとり身をもむ松の声