和歌と俳句

加賀千代女

こぼしてはその葉のひろふ萩の露

露に染て皆地にかへる萩の花

これほどな穂にひしたたぬかな

秋風のいふままに成る尾花かな

晩鐘に幾つか沈む尾花哉

角ぐみもいつしか解てあしの花

風は風に心も置ずあしの花

かたびらの襟にはくさしの音

穂に出てや二見に通ふの音

の香やなじみでもない草にまで

蘭の香やゆかし道に問あたり

の香や手にうけて見るものならば

鶏頭やならべてものの干て有

鶏頭やまことの声は根に遊び

きくはたやいかにすぐれて残る菊

ひと色の野菊でしまふ心こそ

十日にはまさりかほなる野菊かな

花や葉に恥しいほど長瓢

行秋の声も出るやふくべより

まつ茸やあれもなにかの雨やどり

ゆく秋や持て来た風は置ながら

行秋やひとり身をもむ松の声