和歌と俳句

鶏頭 鶏冠 からあい

鶏頭や雁の来る時尚あかし 芭蕉

鶏頭や松にならひの清閑寺 其角

鶏頭やならべてものの干て有 千代女

錦木は吹倒されて鶏頭花 蕪村

秋風の吹のこしてや鶏頭花 蕪村

鶏頭やはかなきあきを天窓勝 太祇

けいとうの宿や窓から答へけり 召波

鶏頭の黄なるも時を得たる哉 青蘿

鶏頭や倒るゝ日迄色ふかし 青蘿

鶏頭の濃もうすくもあかき哉 白雄

一本の鶏頭ぶつつり折にけり 一茶

ほつほつと痩ケイトウも月夜也 一茶

鶏頭が立往生をしたりけり 一茶

鶏頭の十四五本もありぬべし 子規

何もかもかれて墓場の鶏頭花 子規

鶏頭や賤が伏家の唐錦 子規

墓原や小草も無しに鶏頭花 子規

藁葺の法華の寺や鶏頭花 子規

鶏頭の黄色は淋し常楽寺 漱石

鶏頭に太鼓敲くや本門寺 漱石

痩馬に車つなぐや鶏頭花 虚子

鶏頭の陽気に秋を観ずらん 漱石

寺借りて二十日になりぬ鶏頭花 漱石

鶏頭の色づかであり温泉の流 漱石


秋の日の日和よろこび打つ畑のくまみにさける唐藍の花

鵜籠置く庭広々と鶏頭花 虚子

鶏頭や紺屋の庭に紅久し 放哉

雨彼岸過ぎし物日の鶏頭かな 碧梧桐

たのまれて戒名選む鶏頭哉 漱石

白秋
ひいやりと剃刀ひとる落ちてあり鶏頭の花黄なる庭さき

白秋
鶏頭の血したたれる厩にも秋のあはれの見ゆる汽車みち

白秋
三月まへ穂麦のびたる畑なりきいま血のごとく鶏頭の咲く

白秋
またぞろふさぎの蟲奴がつのるなり黄なる鶏頭赤き鶏頭

利玄
女の子頬ずりしたし鶏頭の毛糸の手鞠咲き出でにけり

利玄
鶏頭の黄いろと赤のびろうどの玉のかはゆき秋の太陽