和歌と俳句

野分

定家
荻の葉にかはりし風の秋のこゑやがて野分の露くだくなり

良経
きのふまでよもぎに閉ぢし柴の戸も野分にはるる岡のべの里

芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉 芭蕉

吹とばす石はあさまの野分哉 芭蕉

猪もともに吹るる野分かな 芭蕉

晴てけさ空はよごれぬ野分哉 也有

鶏頭に牛の刀の野分かな 也有

雲さはぎ米買ひさはぐ野分哉 也有

鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉 蕪村

門前の老婆子薪貪る野分かな 蕪村

船頭の棹とられたる野分哉 蕪村

鴻の巣の網代にかかる野分哉 蕪村

野分して鼠のわたるにわたずみ 蕪村

あかつきのやねに矢のたつ野分哉 蕪村

先ふたつ瓦ふくもの野分かな 蕪村

恙なき帆柱寐せる野分かな 蕪村

市人のよべ問かはすのはきかな 蕪村

客僧の二階下り来る野分哉 蕪村

関の燈をともせば滅ゆる野分哉 蕪村

西須磨を通る野分のあした哉 蕪村

妻も子も寺で物くふ野分かな 蕪村

榎野分にて浅間の煙余所に立 蕪村

底のない桶こけ歩く野分哉 蕪村

元興寺の塔依然たる野分かな 蕪村

浅川の水も吹散る野分かな 太祇

渡し守舟流したる野分哉 太祇

枝裂てしろりと明る野分哉 太祇

物のあやも暮て猶吹野分哉 几董

雪隠のかきがねはづす野分かな 召波

岩角をふみかく駒の野分かな 青蘿

山は虹いまだに湖水は野分哉 一茶

せい出して山湯のけむる野分哉 一茶

裸児と烏とさはぐ野分哉 一茶

寝むしろや野分に吹かす足のうら