物のあやも暮て猶吹野分哉
雨風の夜もわりなしや雁の声
落鮎や畠もひたす雨の暮
今は身を水に任すや秋の鮎
渋鮎を灸り過たる山家哉
椋鳥わたる桂のあした加茂の暮
花そばや立出て見ればましろなる
山河の野路に成行や蓼の花
紫に似ずてゆかしき野菊かな
来る雁にはかなきことを聞夜哉
椎の実の落て音せよ檜笠
ひとりはえてひとつなりたる瓢かな
夕かぜやしぶしぶ動く長ふくべ
残菊にさめじと契る欝金香
痩臑に落穂よけ行聖かな
茸狩の柴に焚るゝさくら哉
出るかと妖物をまつ夜長哉
逢坂の町や針研夜半の秋
妓王寺へ六波羅の鐘や夜半の秋
はるばると来てわかるゝやすまの秋
蕣に鴬見たりくれの秋
行秋や五月に糶しことし米
小鍋買て冬の夜を待数奇心