枝戦へど幹静かなる野分かな 泊雲
蟷螂壁に白日濁る野分かな 泊雲
草の中に小家漂ふ野分かな 泊雲
園竹のざわと地を掃く野分かな 龍之介
野分して屋根に茅なき庵かな 龍之介
椋鳥を礫に打つて野分かな 龍之介
筧の水しばしば崖に吹きあて野分哉 泊雲
蟷螂青く燈に来てやすき野分かな 石鼎
さびしさに虫啼き募る野分かな 石鼎
見廻はれば人眠り居ぬ野分の夜 かな女
ちりあなにこほろぎとべる野分かな 禅寺洞
ははきぎを吹きおこしたる野分かな 禅寺洞
野分していよいよ遠き入日かな 草城
痛快に芭蕉裂けたる野分かな 草城
盗まれし後のふくべに野分かな 虚子
大いなる帽子野分に黒かりし 龍之介
ぽつぽつと野分に灯る茶屋淋し みどり女
ちぎれとぶ葉のよろこびや暁野分 石鼎
梁を見上げし父と子に野分 石鼎
野分やゝ衰へし園を一めぐり 風生
潦渡り走りぬ野分人 かな女
やどり木もとりつき騒ぐ野分かな 青畝
野分吹く水をはねたり蓼の上 青畝
糸滝を吹きたはめたる野分かな 石鼎
滝の音くれてしまひし野分かな 石鼎
日にけに野分つのりて空明し三原の煙立たずなりしか 耕平
我声の吹き飛び聞ゆ野分かな 虚子