日野草城
深草の秋や艸山瑞光寺
秋高く元政庵は古びたり
うち倚るや秋色暮るる汽車の窓
手を洗ふ水の音しぬ秋の閑
みなかみの秋を慕うて帰るなり
山房も秋なめり主ゐぬままに
楠の木のとはの翠や秋高し
秋立つや一片耿々の志
秋立ちしその夜の友の佳句一つ
秋立つや翠巒の翠今朝殊に
長病癒えで秋立ち秋なかば
心の疲れ、秋が立つても青い田よ
明石海峡朝ぐもりして今朝の秋
秋立つと乳のかごとを聴く夜かな
八月の停雲白し彩霞峰
わが葉月夜を疎めども故はなし
あをあをと夕空澄みて残暑かな
竿のものしきりに乾く残暑かな
松大樹残暑の影を横たふる
赤屋根に日の当りたる残暑かな