和歌と俳句

日野草城

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静けさや蘭の葉末の一つ

果樹園を守る灯影や露しぐれ

新墓に早も露添ふあはれかな

白露や病顔かくも朗らかに

白露や吾妹子ながら観世音

竹伐るや竹の白露うちかぶり

磐一打の渓山谺かな

草の露素足に落ちて砕けけり

日昇るや渓山の露七いろに

眠られぬ病もちけり露の宿

白露や竹を流れてとどまらず

みささぎや響き落ちたる松の

朝露や碧ほのかに蛍ぐさ

病み合うて別れ話やの秋

有明や露の閂真一文字

いたづけばも心に沁むばかり

昼深き露を秘めたる葎かな

そぞろ出て露に駭く露台かな

従いて来し犬の嚏や露時雨

三幹の竹に白露置くことぞ