和歌と俳句

残暑

牛部やに蚊の声闇き残暑哉 芭蕉

かまきりの虚空をにらむ残暑哉 北枝

萩の声のこるあつさを隙て居る 千代女

荻の葉にひらひら残る暑哉 一茶

七夕に団扇をかさん残暑哉 子規

家の向き西日に残る暑さ哉 子規

捨てもあへぬ団扇参れと残暑哉 漱石

秋暑し癒なんとして胃の病 漱石

馬市に祭控へて残暑かな 碧梧桐

門前に出茶屋の松の残暑かな 万太郎

玄関の下駄に日の照る残暑かな 鬼城

椎伐つて碑の苔かれし残暑哉 泊雲

芭蕉葉の縁が焦げたる残暑かな 泊雲

あをあをと夕空澄みて残暑かな 草城

別れきし身に大阪の残暑かな 草城

ぢりぢりと向日葵枯るる残暑かな 龍之介

秋暑し熱砂にひたと葉つぱ草 久女

やうやうに残る暑さも萩の露 虚子

縁の鏡にぺたりと坐して残暑人 みどり女

おいらん草こぼれ溜りし残暑かな 久女

秋暑し榎枯れたる一里塚 茅舎