鴈聞に京の秋におもむかむ
朝茶のむ僧静也菊の花
折々は酢になるきくのさかなかな
てふも来て酢をすふ菊の鱠哉
初秋や畳ながらの蚊屋の夜着
秋海棠西瓜の色に咲にけり
乳麪の下たきたつる夜寒哉
荻の穂や頭をつかむ羅生門
牛部やに蚊の声闇き残暑哉
淋しさや釘にかけたるきりぎりす
秋のいろぬかみそつぼもなかりけり
米くるる友を今宵の月の客
やすやすと出ていざよふ月の雲
十六夜や海老煎る程の宵の闇
祖父親まごの栄や柿みかむ
稲すずめ茶木畠や迯処
鷹の目も今や暮ぬと鳴うづら
草の戸や日暮てくれし菊の酒
蕎麦もみてけなりがらせよ野良の萩
橋桁のしのぶは月の名残哉
九たび起ても月の七つ哉
秋風のふけども青し栗のいが