菊の花咲や石屋の石の間
琴箱や古物店の背戸の菊
行秋のけしにせまりてかくれけり
いなづまやかほのところが薄の穂
ひやひやと壁をふまへて昼寐哉
道ほそし相撲とり草の花の露
たなばたや穐をさだむる夜のはじめ
家はみな杖にしら髪の墓参
数ならぬ身となおもひそ玉祭り
いなづまや闇の方行五位の声
風色やしどろに植し庭の萩
里ふりて柿の木もたぬ家もなし
名月に麓の霧や田のくもり
名月の花かと見へて棉畠
今宵誰よし野の月も十六里
まつ茸やしらぬ木の葉のへばりつく
蕎麦はまだ花でもてなす山路かな
新藁の出初てはやき時雨哉
行あきや手をひろげたる栗のいが
冬瓜やたがいにかはる顔の形
びいと啼く尻声悲し夜の鹿
菊の香やならには古き仏達