はやくさけ九日も近し菊の花
藤の実は俳諧にせん花の跡
西行の草鞋もかかれ松の露
蛤のふたみに別行秋ぞ
月さびよ明智が妻の咄しせん
尊さに皆おしあひぬ御遷宮
秋の風伊勢の墓原猶すごし
硯かと拾ふやくぼき石の 露
門に入ればそてつに 蘭のにほひ哉
きくの露落て拾へばぬかごかな
枝ぶりの日ごとに替る芙蓉かな
茸狩やあぶなきことにゆふしぐれ
猪もともに吹るる野分かな
こちらむけ我もさびしき秋の暮
合歓の木の葉ごしもいとへ星のかげ
玉祭りけふも焼場のけぶり哉
蜻蜒やとりつきかねし草の上
白髪ぬく枕の下やきりぎりす
明月や座にうつくしき皃もなし
月しろや膝に手を置宵の宿
桐の木にうづら鳴なる塀の内
稲妻にさとらぬ人の貴さよ
草の戸をしれや穂蓼に唐がらし
病む鳫の夜さむに落て旅ね哉
海士の屋は小海老にまじるいとど哉