和歌と俳句

月ぞしるべこなたへ入せ旅の宿 芭蕉

影は天の下てる姫か月のかほ 芭蕉

詠るや江戸にはまれな山の月 芭蕉

実や月間口千金の通り町 芭蕉

侘てすめ月侘斎がなら茶哥 芭蕉

武蔵野の月の若ばへや松嶌種 芭蕉

月十四日今宵三十九の童部 芭蕉

芭蕉 (野ざらし紀行)
馬に寐て残夢月遠し茶のけぶり

芭蕉 (野ざらし紀行)
みそか月なし千とせの杉を抱あらし

月はやしこずゑはあめを持ながら 芭蕉

あの中に蒔絵書たし宿の月 芭蕉

月影や四門四宗も只一つ 芭蕉

一家に遊女も寐たりと月 芭蕉

義仲に寝覚の山か月悲し 芭蕉

中山や越路も月はまた命 芭蕉

国ぐにの八景更に気比の月 芭蕉

月清し遊行のもてる砂の上 芭蕉

衣着て小貝拾はんいろの月 芭蕉

月さびよ明智が妻の咄しせん 芭蕉

鎖あけて月さし入よ浮み堂 芭蕉

芭蕉葉を柱にかけん庵の月 芭蕉

入月の跡は机の四隅哉 芭蕉

月澄むや狐こはがる児の供 芭蕉

しばのとの月やそのままあみだ坊 芭蕉

猿猴の手をはなれてや峰の月 支考

これこそは月をあるじや水の色 千代女

なかれても底しづかなり水の月 千代女

月天心貧しき町を通りけり 蕪村

水一筋月よりうつす桂河 蕪村

三井寺や月の詩つくる踏落し 蕪村

庵の月主をとへば芋掘りに 蕪村

鬼老て河原の院の月に泣ク 蕪村

夜走りに聲する月の淡路潟 蕪村

石山やのどかに出る秋の月 暁台

さをしかの角にかけてや峯の月 暁台

たまに来た古郷の月は曇りけり 一茶

湯けぶりにふすぼりもせぬ月の皃 一茶

そば時や月のしなのの善光寺 一茶

あの月をとつてくれろと泣子哉 一茶

人顔は月より先へ欠にけり 一茶

深川や蠣がら山の秋の月 一茶