和歌と俳句

木犀の花 金木犀 銀木犀

木犀の香は七夕の追風歟 野坡

木犀や禅をいふなる僧と我 召波

しろたへの衣手寒き秋雨に庭の木犀香に聞え來も 

白妙のいさごもきよき山陵は花木犀のかをる瑞垣 

木犀に薪積みけり二尊院 碧梧桐

木犀の匂ふべき日となりにけりをちこち友の住みわびし世に 牧水

木犀に人を思ひて徘徊す 放哉

木犀や月の宴の西の対 鬼城

木犀や夕じめりたる石だたみ 龍之介

何処より木犀匂ふ対座かな 風生

木犀の匂かくれぬ日和かな 草城

香を尋めて来て木犀の花ざかり 草城

木犀のこぼるゝ石に憩ひけり みどり女

木犀をきゝそめにしや夜の道 橙黄子

木犀や西洋館の日本室 風生

見上げたる金木犀の大樹かな 青邨

やがてまた木犀の香に遠ざかる 青邨

白秋
夜のくだち 小雨しづみて にほひ來る 金木犀に うらなづみゐる

ほつほつと木犀の香に降つて来し 汀女

木犀に朝の蔀を上げにけり たかし

木犀の縁にひれ伏す使かな 虚子

木犀や月明かに匂ひけり 青邨

警策に散る木犀の大樹かな かな女

木犀の掌にも溢れて猶匂ふ かな女

木犀に木馬叩けばうごきけり かな女

木犀の香に立ちよりて香になるゝ みどり女

木犀に天を仰ぎてゐたりけり 占魚

木犀の匂ふとまたも言はで居り 汀女

木犀の香にあり心あらがはず 鷹女

鋏入れし木々に木犀薫じ亘る 草田男

木犀の香は秋の香を近づけず 虚子

木犀の香や縫ひつぎて七夜なる 多佳子

もくせいの香や壁つたふ屋根の洩り 誓子

木犀の香や金星の方角に 誓子

街道の溝ももくせい香ににほふ 誓子

金星は低く木犀芬々と 誓子

木犀やいまだ家風に染まずして 誓子

この門の木犀の香に往来かな 素十

木犀の香や年々のきのふけふ 麦南