黒柳召波
北は黄にいてふぞ見ゆる大徳寺
秋雨や四方縁にも濡るゝ方
うづら篭棚の鼓に並びけり
明ばまた夜寒の雨戸繕はん
月の洩穴も夜寒のひとつ哉
鳴川の戸に寄鹿や下駄の音
ぬれ色に起行鹿や草の雨
遁とぶ椋鳥一群や森の月
鵙鳴くや黍より低き小松原
木犀や禅をいふなる僧と我
初鳫や目に相手なき海の月
低く飛雁あり扨は水近し
月山の梢に響く秋の声
唐櫃の北山戻るきのこかな
さし上て獲見せけり菌狩
降出して茸狩残す遺恨哉
紅葉見や小雨つれなき村はづれ
花の時は気づかざりしが老母草の実
梅もどき我あり顔や暮の秋
長き藻も秋行筋や水の底
月影の不破にも洩らず九月尽
褌に贈別の詩や九月尽