和歌と俳句

黒柳召波

あかつきの一言ぬしやほとゝぎす

ほとゝぎす我も都のうつけ哉

うぐひすの箱根や伊豆の子規

ほとゝぎす啼やあふみの西東

卯の花や茶俵作る宇治の里

卯の花に貴船のみこの箒哉

道のべの低きにほひや茨の花

逞しき葉のさまうたて桐の花

ぎやうぎやうし日高に着て伏見

灌仏や運慶閑に刻けん

灌仏やわらぢも許す堂の櫞

さびしさの中に声ありかんこ鳥

昼日中逢人もなしかんこどり

虹たるゝもとや樗の木間より

加茂衆の御所に紛るゝかな

大坂の牡丹さ ゝげぬ本願寺

園広し黄なるも交る牡丹

十津河や見込の武具も麦埃

短夜や老しり初る食もたれ

みじか夜をしらで明けり草の雨

かたつぶりけさとも同じあり所

夜べの雨馬藺に殖ぬ蝸牛

青んめや黄なるも交雨の中

かきつばた深く住戸に鳴子哉

鍵の手の寺前の池やかきつばた