夕日影道まで出るかゞし哉
編笠のことにわびしき案山子哉
朝風に弓返リしたる案山子哉
よきものと冬瓜勧るくすし哉
汁菜にならでうき世をへちま哉
そばの花畠の秋も後段哉
花を見て蓼の多さよ此辺
折よりは行に慰む花野哉
かたはらにかぼちや花咲野菊哉
薮畳半は蔦のもみぢけり
雪隠のかきがねはづす野分かな
白髭の笠木も見えて秋の水
くずの葉も吹や鳴子のうら表
秋ざれや柿さまざまの物のしな
蕃椒常世が鉢にちぎりけり
けいとうの宿や窓から答へけり
秋風に涕す ゝりけりきりぎりす
人心しづかに菊の節句かな
初ぎくや九日までの宵月夜
菊の香や十日の朝のめしの前
毬栗に踏あやまちそ老の坂
小ともしの油あやまつきぬた哉
油断して京へ連なし牛まつり
買ほどは尽さぬ旅の新酒哉
つけざしの穂に出る君やことし酒