和歌と俳句

唐辛子 とうがらし

唐がらし茄子にあけも奪れず 来山

かくさぬぞ宿は菜汁に唐がらし 芭蕉

草の戸をしれや穂蓼に唐がらし 芭蕉

青くても有べき物を唐辛子 芭蕉

鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有

にしき木を立ぬ垣根や番椒 蕪村

餉にからき涙やとうがらし 蕪村

俵して蔵め蓄へぬ番椒 蕪村

御園守る翁が庭やとうがらし 蕪村

うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村

番椒畳の上へはかりけり 太祇

白き花のこぼれてもあり番椒 太祇

蕃椒常世が鉢にちぎりけり 召波

兵の矢先に似たり唐がらし 青蘿

寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶

唐辛子一ツ二ツは青くあれ 子規

雨風にますます赤し唐辛子 子規

唐辛子辛きが上の赤さかな 子規

あき家に一畝赤し唐がらし 子規

唐辛子おろかな色はなかりけり 子規

唐辛子かんで待つ夜の恨哉 子規

唐辛子赤き穂先をそろへけり 子規

唐辛子蘆のまろ屋の戸口哉 子規

蕃椒広長舌をちぢめけり 子規

悪の利く女形なり唐辛子 子規

一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐

赤き物少しは参れ蕃椒 漱石

唐辛子乏しき酒の肴かな 虚子

鳴滝や植木が中の蕃椒 碧梧桐

一年を妻の蔵めし唐辛子 碧梧桐

白秋
武蔵野のだんだん畑の唐辛子いまあかあかと刈り干しにけれ