茂吉
いちめんの唐辛子あかき畑みち立てる童のまなこ小さし
とり入るる夕の色や唐辛子 虚子
誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
秋日や喰へば舌やく唐がらし 蛇笏
唐辛子赤く辛くとつくりけり 喜舟
皆尻を曲げて色づけ唐辛子 橙黄子
唐辛子赤さ青さのお別れよ 橙黄子
唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
とりもちて蕃椒枯れそ唐錦 蛇笏
唐辛子色に出でたり花圃荒るる 播水
大いなる縁戸袋や蕃椒 石鼎
戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
今一奮発奮発唐辛子 虚子
唐辛子必ず畝のはしにあり 花蓑
辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
萬斛のつゆの朝夕唐がらし 蛇笏
晴るる日も畑霑ひて唐辛子 蛇笏
熟れいろのにはかにしげき唐辛子 蛇笏
南蛮の日向すずろにふまれけり 蛇笏
唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨
かけ足して直ぐ赤らむや唐辛 普羅
庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
炎ゆる間がいのち 女と唐辛子 鷹女
河が光つて夜はねむれぬ唐辛子 鷹女
唐辛子男児の傷結ひて放つ 草田男
唐辛子色変へぬ間に癒え給へ 波郷
唐辛子烈士紫色の血を遺す 青畝
てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男