和歌と俳句

秋の波

石鼎
秋の浪一つの岩を巻きやまず

引揚ぐる船を追ひうつ秋の波 虚子

草田男
眼の前を江の奥へ行く秋の波

誓子
秋の浪艦艇長き艫を牽く

青畝
風早の沖のあたりか秋の波

青畝
かなかなに時化のなごりの秋の波

いさかへる鴎に秋の波あらく 占魚

誓子
榊棄つ葬のあとの秋の波

誓子
秋の浪見つつ黙して人遊ぶ

秋の波出洲の寂しさ極まれり 誓子

鷹女
秋浪や欷くとき歪む唇の紅

鷹女
秋浪も吾を呼ぶこゑも昔かな

又一つ岩現れ来秋の波 虚子

秋の波たたみたたみて火の国へ 虚子

くり返す間の遠き秋の波 風生

誓子
秋の浪位牌を陸に揚げて去る

楸邨
巌の左右を秋濤はしりきて逢ふも

蛇笏
一色の紙のごとくに秋の濤

不死男
ととととと蟹の眼洗ふ秋の波