和歌と俳句

にて候高野山より出たる芋 宗因

芋洗ふ女西行ならば哥よまむ 芭蕉

いものはや月待つさとの焼ばたけ 芭蕉

手向けり芋ははちすに似たるとて 芭蕉

芋洗ふ人より先に垢離とらん 去来

芋の葉や蓮かと問へばかぶり振る 也有

いざよひの芋や十日の菊の顔 也有

庵の月主をとへば芋掘りに 蕪村

めでたくも作り出けり芋の丈 太祇

浦風に蟹もきにけり芋畠 太祇


芋の子や籠の目あらみころげ落つ 子規

三日月の頃より肥ゆる小芋哉 子規

ころころと月と芋との別れかな 虚子

盗なるかな茸狩りに来て芋を掘る 虚子

琵琶聴くや芋をくふたる皃もせず 子規

我土に天下の芋を作りけり 虚子

盗人が芋掘り去つて主泣く 虚子

山中に句境開けて芋高し 碧梧桐

芋の味忘れし故に参りたり 虚子

芋を掘る手をそのままに上京す 虚子

数ふべく大きな芋の葉なりけり 漱石

芋掘るは愚也金掘るは尚愚也 放哉

ふつつかに生まれて芋の親子かな 漱石

芋の葉に玄翁の火や石碑彫る 泊雲

葉を喰はれて芋や土中に黙し居る 泊雲

芋洗ふ底を濁せし緋鯉かな 泊雲

我土に天下の芋を作りけり 虚子

おもひおくことはないゆふべの芋の葉ひらひら 山頭火

芋秋の大河にあらへたびごろも 蛇笏

葉の戦ぎに少し応へて芋の茎 泊雲

芋の葉や孔子の教へ今もなほ 蛇笏

土間に積みし芋にぬぎあり泥草履 石鼎

蓑鍬に日和の土間や芋かはく 石鼎

芋喰ふや大口あいていとし妻 蛇笏

芋掘るや笠に弾ね来し土嬉し 石鼎

芋畑に四五基の墓のかくれけり 喜舟

山墾いて杣も農たり芋の秋 麦南

芋の葉の揺れうつり行き児現はる 櫻坡子

芋の葉の露して蜘蛛の忘れ絲 花蓑

梵妻や芋煮て庫裡をつかさどる 茅舎

芋腹をたたいて歓喜童子かな 茅舎

八方を睨める軍鶏や芋畑 茅舎

芋の葉を目深に馬頭観世音 茅舎

肥担ぐ汝等比丘や芋の秋 茅舎

芋秋や汽車ゆるやかに境線 野風呂

芋を作り煙草をつくる那須野かな 虚子

芋畑に鍬をかついで現れし 虚子

芋の露姥子の宿ははや寝たり たかし

風頭かぶりて芋を掘りにけり 青畝

芋掘りて疲れたる夜の筆づかひ 波郷

日ざすかと見れば降り増す芋の雨 花蓑

芋の露父より母のすこやかに 波郷

自転車が退けとベルしぬ芋の道 汀女

芋の露二十ばかりや都辺に 波郷

芋の葉の八方むける日の出かな 波郷

芋畑や赤城へいそぐ雲ばかり 波郷

芋の秋七番日記読み得るや 波郷

星空へひしめく闇の芋畑 素逝

抱き寝る外の土中に芋太る 三鬼

芋掘りし泥足脛は美しく 静塔

小国町南小国村芋水車 虚子

かけて見せ外しても見せ芋水車 虚子

虔しき酒のはじめや煮染芋 波郷

やつがしら抱へてあるく土埃り 双魚

芋食つて今様地獄なつかしき 耕衣