和歌と俳句

炭 太祇

眼ざましにみる背戸ながら今朝の露

木戸しめて明る夜惜むおどり

船よせて見れば柳のちる日かな

たま祭持仏に残す阿弥陀かな

君こねばあぶら灯うすし初嵐

めでたくも作り出けりの丈

浦風に蟹もきにけり芋畠

よひやみや門に稚き踊声

夜の間の露ゆりすふる広葉哉

吹倒す起す吹るゝ案山子かな

片足は踏とゞまるやきりぎりす

はつ鴈や夜は目の行ものゝ隅

さはがしき露の栖やくつわ虫

脱すてゝ角力になりぬ草の上

鬼灯や物うちかこつ口のうち

はつ雁やこゝろつもりの下リ所

鉢の子ににえたつ粥や今年米

猪の庭ふむ音や木の実ふる

待霄やくるゝにはやき家の奥

手折てははなはだ長し女郎花

稲妻の無き日は空のなつかしき

いなづまのこもりてみゆれ草の原

もるゝ香や蘭も覆の紙一重

芋の露野守の鏡何ならん

いなづまや雨雲わかるやみのそら