名月や船なき磯の岩づたひ
日は竹に落て人なし小鳥網
聞はづす声につゞくや鹿の声
くさの戸の用意おかしや菊の酒
朝市や通かゝりてけふの菊
田舎から柿くれにけり十三夜
十三夜月はみるやととなりから
朝市や虫まだ声すものゝ下
あさ寒や旅の宿たつ人の声
打やまぬ碪たのもし夜の旅
枝裂てしろりと明る野分哉
よる浪やたつとしもなき鴫一ッ
白き花のこぼれてもあり番椒
中入に見まふ和尚や茸がり
一葉さへかさなりやすき日数かな
家々や銚子のきくの咲さかぬ
しづめたるきくの節句の匂ひ哉
いく浦のきぬたや聞てかゝり船
暁の籠をぬけけんむしの声
寒きとて寝る人もあり暮の秋
気のつかぬ隣の顔や暮の秋
鷄頭やひとつはそだつこぼれ種