夜に入ば灯のもる壁や蔦かづら
引けば寄蔦や梢のこゝかしこ
町庭のこゝろに足るやうす紅葉
青き葉の吹れ残るや綿畠
柿売の旅寐は寒し柿の側
関越て亦柿かぶる袂かな
残る葉と染かはす柿や二ツ三ツ
かぶり欠く柿の渋さや十が十
よく飲マば価はとらじことし酒
新米のもたるゝ腹や穀潰し
どうあろと先新米ぞうまし国
芦の穂に沖の早風の余哉
迷ひ出る道の薮根の照葉かな
身ひとつをよせる籬や種ふくべ
口を切る瓢や禅のかの刀
此あたり書出し入もふくべ哉
小山田の水落す日やしたりがほ
永き夜を半分酒に遣ひけり
あきの夜や自問自答の気の弱
寐て起て長き夜にすむひとり哉
永き夜や思ひけし行老の夢
落る日や北に雨もつ暮の秋
塵塚に蕣さきぬくれの秋
行秋や抱けば身に添ふ膝頭
孳せし馬の弱りや暮の秋