祖父親まごの栄や柿みかむ 芭蕉
里ふりて柿の木持たぬ家もなし 芭蕉
柿の葉の遠くちりきぬ蕎麦畠 蕪村
残る葉と染かはす柿や二ツ三ツ 太祇
かぶり欠く柿の渋さや十が十 太祇
渋柿や嘴おしぬぐふ山がらす 白雄
渋いとこ母が喰ひけり山の柿 一茶
渋柿や行来のしげき道の端 子規
柿の實やうれしさうにもなく烏 子規
渋柿のとり残されてあはれ也 子規
渋柿もまじりてともに盆の中 子規
秋さびて霜に落けり柿一つ 漱石
渋柿や古寺多き奈良の町 子規
わがやどの柿熟したり鳥来たり 漱石
柿売るや隣の家は紙を漉く 漱石
柿くふや道灌山の婆が茶屋 子規
此里や柿渋からず夫子住む 漱石
子規
世の人はさかしらをすと酒飲みぬあれは柿くひて猿にかも似る
子規
御仏にそなへし柿ののこれるをわれにぞたびし十まりいつつ
子規
籠にもりて柿おくりきぬ古里の高尾の楓色づきにけん
子規
柿の実のあまきもありぬ柿の実のしぶきもありぬしぶきぞうまき
つり鐘の蔕のところが渋かりき 子規
柿熟す愚庵に猿も弟子もなし 子規
稍渋き仏の柿をもらひけり 子規
御仏に供へあまりの柿十五 子規
三千の俳句を閲し柿二つ 子規
南九州に入つて柿既に熟す 漱石
樽柿の渋き昔を忘るるな 漱石
渋柿やあかの他人であるからは 漱石
豆柿の小くとも数で勝つ気よな 漱石
能もなき渋柿どもや門の内 漱石
樽柿を握るところを写生哉 子規
渋柿や長者と見えて岡の家 漱石
柿くふも今年ばかりと思ひけり 子規
渋柿やにくき庄屋の門構 漱石
去来抄柿を喰ひつつ讀む夜かな 虚子
山囲む帰臥の天地や柿の秋 碧梧桐
潮風に赤らむ柿の漁村かな 放哉
柿の村城遠巻の藪も見ゆ 碧梧桐
渋柿も熟れて王維の詩集哉 漱石
柿一つ枝に残りて烏哉 漱石
白秋
柿の赤き實隣家のへだて飛び越えてころげ廻れり暴風雨吹け吹け