左千夫
をの子ども三人よりあひ胡坐かきザボンの窓に物うち語る
憲吉
庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり
憲吉
庭の樹に雨繁吹きつつボンタンが折をり光るその葉の中に
憲吉
にはたずみ流るる庭をボンタンは擦りがてに搖る風にもまれて
憲吉
ボンタンの枝ひくければ黄金だまあらしの雨に泥はねにけり
憲吉
手水鉢に雨水満てばおのづからボンタンの實が浸るべくあり
憲吉
あをあをし椿の垣にボンタンの實が埋もれて大きく明し
われが来し南の国のザボンかな 虚子
人語なし朱欒が熟るゝ島の昼 貞
ふるさとも南の方の朱欒かな 汀女
日が照りぬ大き朱欒をむけば實に 汀女
朱欒割くや歓喜の如き色と香と 波郷
押しいでし熔岩に朱欒の邑のこる 秋櫻子
朱欒売海を見てをり船出前 秋櫻子