長雨の降るだけ降るや赤のまま
子供等が露を叩いてやつて来し
窓の外に燃え果てざりし流れ星
傘さして母やおくれて秋の雨
うたたねの母残し出て法師蝉
秋風や曼珠沙華折れ蜘蛛太り
ひたすらに人等家路に秋の暮
わが肩に触りゆく人も秋の暮
また読みしいつものネオン秋の暮
人のごと小鳥もぬくし秋の暮
子とありて笑へる声や秋の暮
ふるさとも南の方の朱欒かな
日が照りぬ大き朱欒をむけば實に
丸の内三時の陰り秋の風
秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな
秋の灯に車掌時計をさしのぞき
若人のきざむ墓石や菊日和
土砂降りの跡にとどまり貝割菜
稲馬の人よりも尚道を急き
病室の秋日は疾くに陰るらし
秋の灯の入るよと見れば色得つつ
あひふれし子の手とりたる門火かな
秋風や花つづけきし金鳳華
稲の秋芒は高くやはらかく