かなしければ一つ並びに烏瓜
見る見るに暮れたるものに烏瓜
稲雀にも夕暮や人恋し
一夏の旅路の果ぞ鉦叩
霧生るる夕ひとときの人通り
秋風の町わづかにて見失ひ
子をあやす行く舟見せて秋の暮
撫子も木賊の丈も秋に入る
立秋の雨はや一過朝鏡
蟻上下消えてゐたりし鰯雲
秋袷ひとりに下る昇降機
行人の見る七夕を結びけり
秋風や面にあたる船の笛
沓脱の小さき靴も蟲の夜に
たちまちに蜩の声揃ふなり
月明のふとさびしさよ木槿垣
秋晴を歩みて屋根を繕へる
菊の香や何も映らず夜の鏡
コスモスの広きみだれに夜のとばり
コスモスの夜の花びらの冷えわたり
コスモスの夜は一色に花そむき
満汐の向ふの町の秋祭
石橋のぬくき手摺に祭笠
また別に坂が斜めに法師蝉