和歌と俳句

中村汀女

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かなしければ一つ並びに烏瓜

見る見るに暮れたるものに烏瓜

稲雀にも夕暮や人恋し

一夏の旅路の果ぞ鉦叩

生るる夕ひとときの人通り

秋風の町わづかにて見失ひ

子をあやす行く舟見せて秋の暮

撫子も木賊の丈も秋に入る

立秋の雨はや一過朝鏡

蟻上下消えてゐたりし鰯雲

秋袷ひとりに下る昇降機

行人の見る七夕を結びけり

秋風や面にあたる船の笛

沓脱の小さき靴も蟲の夜に

たちまちにの声揃ふなり

月明のふとさびしさよ木槿垣

秋晴を歩みて屋根を繕へる

菊の香や何も映らず夜の鏡

コスモスの広きみだれに夜のとばり

コスモスの夜の花びらの冷えわたり

コスモスの夜は一色に花そむき

満汐の向ふの町の秋祭

石橋のぬくき手摺に祭笠

また別に坂が斜めに法師蝉