和歌と俳句

中村汀女

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竹洩るる一片の光かな

十三夜今明らかに竹立てる

末枯や汐先橋を経て来れば

秋汐に漂ふものも去り行きし

片寄りて子等の拾へる木の実かな

袂より木の実かなしきときも出づ

鉦叩ただ一筋や二夜三夜

秋風や船の炊ぎも陸の火も

人波にしばしさからひ秋の暮

ひたひたと跣足に来れば烏瓜

山の雨ゆく秋水は別にあり

かくれ住むとて秋蝉の町の上

こほろぎの久しく待ちて音をつづく

すれちがふ間も暮れて来し貝割菜

渡る一声づつや身に遠く

レーダーに応ふる船や菊日和

朝顔や港賑ふ裏町に

人づては果敢なれども法師蝉

家が建ち出窓が出来て菱の池

無花果や川魚料理ただの家

かなしみを紅葉明りに語りつぎ

菊日和この朝明の老のこと

まだ露の深さばかりや菊籬

船音は遠きにさだか鰯雲

月光のひたととどまる小菜の畝