秋草の道の案内もさびしさに
蜩の声終るまで何を待ちし
秋の声谷深まりて来て人家
まつしぐらに花野は霧にもどりけり
われは一日のふるさと人よ稲雀
一の滝すでにはげしや初紅葉
紫苑咲き杉を挽く香の町の口
去りがての祭の客に飛鳥川
山裏へ行く道見えて秋の暮
尚深く住みなす家ぞ紅葉谷
一夜明け山新しく赤とんぼ
桔梗濃しいささか去年語らせよ
月太くぐんぐんとビル引き放ち
稲妻の照らせし胸のまま対す
稲妻が見せし心のあり処かな
湖も秋日もここに完けれ
ゆるぎなく金木犀の香のほとり
鏡台に山の秋雨しぶくほど
撫子も挿し十分に意を得たり
唄ふとて一つ覚えや秋櫻
しばらくは露の桔梗に座をまかす
われよりもすぐに気を変へちちろ鳴く
流星や母そのままの夜にあれば
星とぶや小菜園に茄子太り
流星や片空のみかときめくは