和歌と俳句

紫苑

淋しさを猶も紫苑ののびるなり 子規

竹籠に紫苑活けたり軸は誰 子規

崖下に紫苑咲きけり石の間 漱石


秋雨の垣根の紫苑うちしなひ心がゝらに我慰まず

晶子
思ひ出づや紫苑一もと大ぞらの雲より高く立ちし草むら

晶子
紫苑咲くわが心より上りたる煙の如きうすいろをして

雨晴れや紫苑を囲み蝶数多 泊雲

道のべに船揚げてある紫苑かな 秋櫻子

紫苑高し軍歌をうたふ母と子に 鷹女

紫苑咲き戦場美談子と読める 鷹女

隣り家は紫苑のさかり我が家も 鷹女

人々に更に紫苑に名残あり 虚子

きのふ過ぎけふも紫苑にうするる日 秋櫻子

露の戸に紫苑鋭く咲き揃ふ たかし

露の玉天に盛り上げ紫苑咲く たかし

露日和やがてぞ乾く紫苑かな たかし

紫苑にも濃きと淡きと秋日和 たかし

病家族あげて紫苑に凌がるる 波郷

汝がたてば紫苑の丈けの立ち揃ふ 風生

澄む日影照る月影や紫苑咲く 秋櫻子

雨の紫苑倒るゝことを忘じをり 双魚

紫苑咲き杉を挽く香の町の口 汀女