秋刀魚焼いて火逃げし灰の形かな 青畝
秋刀魚焼く烟の雨となりにけり 万太郎
秋刀魚やくけむり軒よりひたおろし 石鼎
新宅のまだ整はず秋刀魚焼く 花蓑
ひとり焼く秋刀魚はげしきけむりあぐ 桃史
おのれ焼きにがき秋刀魚ぞひとり啖ふ 桃史
秋刀魚焼き妻はたのしきやわが前に 楸邨
髯のびて秋刀魚啖へり我は街に 楸邨
夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ 茅舎
隣人のこめかみ憂しや秋刀魚食ふ 波郷
青空へさんまの焼ける煙濃く 万太郎
さんまのあぶら涙の如くわきにけり 万太郎
秋刀魚焼く憎しみは鋭き焔に焼かれ 鷹女
あす死ぬるいのちかも知らず秋刀魚焼く 鷹女
あらたまるものみなのなか初秋刀魚 友二
秋刀魚焼く戻りて子らよ家に食せ 友二
秋刀魚焼く煙の中の妻を見に 誓子
柚を垂らす秋刀魚筑紫の旅了る 多佳子
風の日や風吹きすさぶ秋刀魚の値 波郷
秋刀魚青銀妊婦財布の紐解きつつ 草田男
秋刀魚競る渦に女声の切れつぱし 多佳子
秋刀魚競場旅の肩身の吹きさらし 多佳子
秋刀魚競る忘れホースの水走り 多佳子
台風を覚悟のさんまくらひけり 万太郎
受難図に棚引く秋刀魚けむりかな 不死男
そこそこに昼めしすますさんまかな 万太郎
さんま焼くけむりのなかの一人かな 万太郎
脂火の秋刀魚が照らす鍬の丈 不死男
路次没日秋刀魚見せあふ主婦ふたり 楸邨
火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり 不死男