改札に万才酔ひて叱られをり
山繭の青の深さよ雪二度目
冬の泥鰌をはなれし泡や星に逢ふ
鶏百羽一羽ころげし青嵐
虹鱒の虹のごときをひと代追ふ
花を拾へばはなびらとなり沙羅双樹
蝙蝠の雛が落ちしと泣き仁王
労働祭パンジーの目が地より湧き
路次没日秋刀魚見せあふ主婦ふたり
霧ははれゆくもう見えるものしか見えず
曼珠沙華もう数へねば花消えよ
大枯野牛あらはれて完成す
まぼろしの鹿はしぐるるばかりかな
山刀伐に虹かかれよと虹の橋
死ににゆく猫に真青の薄原
冬鵙よその知らぬ世に我等棲み
絶巓たしかに霧中の実在それにむかふ
カフカ去れ一茶は来れおでん酒
子に来るもの我にもう来ず初暦
牡丹来て妻の目にあれ手術前
鶴の毛は鳴るか鳴らぬか青あらし
紅き蟹見えざる海に向きて駈け
蟻のゆくてに蟻がゐるらし見えねども
雑巾となるまではわが古浴衣