朝朝の萩より言葉はじまりき
夏痩やあをあをとして竹の肌
十六夜や幾度妻をあざむきし
蜩や杉の左右の蝉しぐれ
朝日出づ芋の露とび土は受け
車座にわれら藷くふわかれかな
朴は実に人は出でたつ秩父かな
鮎落ちて昨日の淵となりにけり
天の川ねむらんとして美しき
とこしへに天の川あり起ちたまへ
紫蘇の香の径をまがりぬ天の川
兜虫よこぎりゐたる踊の座
身に沁みて礁を越ゆる夜の潮
深秋の芒にはしる波の翳
焚火の秀なびくは午後の那珂湊
鴨渡る遠き波へと暮れいそぐ
毛糸編はじまり妻の黙はじまる
冬霧の奥は見えきて竹の青
午過ぎて初霰せり爆音下
笹鳴のたえだえにわが月日かな
冬松の根よりかなしきときありき
ひとり打ちし夕映独楽のむかしかな
雪の日の透きとほるものを見んとせり
笹鳴や逢はでかへりし声は誰