和歌と俳句

焚火

大銀杏颪しやまざる焚火かな 茅舎

ねむれねばま夜の焚火をとりかこむ 素逝

たま来ると夜半の焚火を靴で消す 素逝

捨てし身や焚火にかざす裏表 茅舎

焚火かなし消えんとすれば育てられ 虚子

焚火してくれる情に当りもし 虚子

焚火そだてながら心は人を追ふ 虚子

道暮れぬ焚火明りにあひしより 汀女

風来れば焚火の尉の又赤く 立子

大杉の頂に鵯根に焚火 たかし

焚火火の粉吾の青春永きかた 草田男

かりくらに鳶ひるがへる焚火かな 蛇笏

焚火して金屏風裡にあるが如 茅舎

焚火あと光琳紅葉まきちらし 茅舎

焚火人知らずや栄華物語 茅舎

金屏風立てしがごとく焚火かな 茅舎

宗達銀杏光琳紅葉焚火あと 茅舎

海人たちをしぬぎし焚火すぐ衰ふ 誓子

風さつと焚火の柱少し折れ 虚子

雲もなく陽はゆきやまぬ焚火かな 蛇笏

空谷の底さむかりし焚火かな 楸邨

安達太郎の瑠璃襖なす焚火かな 楸邨

焚火の秀なびくは午後の那珂湊 楸邨

なげ入れしくまでの燃ゆる焚火かな 万太郎

一人退き二人よりくる焚火かな 万太郎

起きて先づゆらぐ焚火の穂を見たり 誓子

日曜の焚火青春灰となる 楸邨

焚火の辺大工の釘の散乱す 誓子

葡萄棚日々の焚火にくすぼれる 彷徨子

箒目の集つてゐる焚火かな 立子

誰も見る焚火火柱直立つを 三鬼

落葉焚く悔いて返らぬことを悔い 真砂女

落葉焚き人に逢ひたくなき日かな 真砂女

焚火する孤りの影をたきしろに 鷹女

何の実の紅玉ぞ焚く火の中に 誓子

焚火の穂よぢれよぢれて常なきなり 誓子

好きな句をそらんじながら焚火守る 立子

坑外の焚火は長き火を立たす 誓子

人ごゑを風ふきちぎる焚火かな 万太郎

獣類も病みてもの憂し焚火見る 誓子

亡き夫顕つごと焚火あたたかし 多佳子

恵心堂建てんと焚火しつつあり 青畝

門前の焚火の話僧知らず 青畝

焚火の穂こころの如く定まらず 誓子

火を焚きて衰太陽を励ませり 誓子

生まれたる日の黒子つけ夕焚火 双魚


短日 冬の日 顔見世 冬の空 水鳥 初雪 初氷 寒さ 冬木立 枯木 冬枯 枯尾花 冬の山 枯野 みそさざい 都鳥 千鳥 冬の海 河豚 海鼠 冬ごもり 埋火 焚火 炬燵 風邪 日向ぼつこ 北風 冬の雨 冬の月 冬至 柚湯 クリスマス 師走 年の市 煤払い 年忘れ 歳の暮 行く年 大晦日 除夜