和歌と俳句

焚火

山深く逢ひし焚火や一あたり たかし

燃えたけてほむらはなるる焚火かな 蛇笏

人を思ひゆく林間に焚火あり 青邨

とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな たかし

焚火する夫に掃き寄りあたりけり みどり女

巌が根に向ひてかこむ焚火かな 立子

桑畑の鵙が見てゐる焚火かな 秋櫻子

庭の鶴ほとりを歩む焚火かな 秋櫻子

焚火の輪百舌鳥を提げたる童あり 秋櫻子

音羽山暮るゝ焚火のはなやかに 草城

焚火屑珍の珊瑚に紛ふあり 草城

うしろべに茶の花咲ける焚火かな 月二郎

結へある芒の横に焚火かな 立子

燃えきりし焚火のそばに語りをる 立子

積む枝を焔くゞれる焚火かな 石鼎

よく燃ゆる焚火に投げぬ松ぼくり 立子

人の背に煙をよけし焚火かな 立子

鶏頭を目がけ飛びつく焚火かな たかし

山川の底にうつれる焚火かな 槐太

青空に雲の居らざる焚火かな 草城

背の肩の焚火埃に笑ひあふ 立子

夕焚火火の粉華やぎ散りにけり 淡路女

夜焚火に金色の崖峙てり 秋櫻子

焚火して焚火恋しき面持ちに 夜半

大堰の築きかへらるる焚火かな 青畝

寝て聞きし鞭のおとは焚火なり 誓子

離れんとしてあたりをり焚火かな たかし

彼女いづこにありや焚火の傍に在り 虚子

放浪の焚火を夜の燈となせり 誓子