山深く逢ひし焚火や一あたり
冬ざれや吾が現れし多摩河原
空色の水とびとびの枯野かな
とつぷりと後暮れゐし焚火かな
夜遊や炉辺から炉辺にたちまはり
菊畑にあまり夜焚火近かりし
見下ろせば来馴れし谷や探梅行
小夜時雨してゐたりけり傘を呼ぶ
暦売古き言の葉まをしけり
地の底に在るもろもろや春を待つ
今日となり明日となりゆく石蕗の花
立てひらく屏風百花の縫つぶし
屏風たてて結界せばき起居かな
さしのぞく木の間月夜や浮寝鳥
初冬や竜胆の葉の薄紅葉
いただきのふつと途切れし冬木かな
赤く見え青くも見ゆる枯木かな
炭ひいて稍まぎれたる愁かな
炭をひく後しづかの思かな
塔の上の鐘動き鳴るクリスマス
鉦講のあらかしましの十夜かな
蝋涙に肩打たれたる十夜かな
灯の数の殖えて淋しき十夜かな
稚子が降らす花を拾ひし十夜かな