和歌と俳句

松本たかし

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山深く逢ひし焚火や一あたり

冬ざれや吾が現れし多摩河原

空色の水とびとびの枯野かな

とつぷりと後暮れゐし焚火かな

夜遊や炉辺から炉辺にたちまはり

菊畑にあまり夜焚火近かりし

三度来て水仙咲きぬ瑞泉寺

見下ろせば来馴れし谷や探梅行

小夜時雨してゐたりけり傘を呼ぶ

暦売古き言の葉まをしけり

地の底に在るもろもろや春を待つ

今日となり明日となりゆく石蕗の花

立てひらく屏風百花の縫つぶし

屏風たてて結界せばき起居かな

さしのぞく木の間月夜や浮寝鳥

初冬や竜胆の葉の薄紅葉

いただきのふつと途切れし冬木かな

赤く見え青くも見ゆる枯木かな

ひいて稍まぎれたる愁かな

炭をひく後しづかの思かな

塔の上の鐘動き鳴るクリスマス

鉦講のあらかしましの十夜かな

蝋涙に肩打たれたる十夜かな

灯の数の殖えて淋しき十夜かな

稚子が降らす花を拾ひし十夜かな