和歌と俳句

松本たかし

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飛騨桑の硬骨たるが雪に立つ

雪嶺の大を数ふや十座余り

雪嶺の皓体雲の環をまとひ

霙るるや小蟹の味のこまやかさ

蟹提げて人霙れ来る三国かな

門に積む菜に降り溜まるかな

鴎啼き日日のに濡るる町

打つ暗き海より獲れし蟹

雪国の雪の止み間の淋しさよ

大幅の楷書に浮ぶ寒牡丹

懐手して萬象に耳目かな

猿橋の虚空にかかり冬日澄む

冬の水水車を外づれ豊かなり

停り合ふ汽車なつかしき雪の駅

主峯以下雪新たなる八ヶ嶽

雪嶺の紅を含みて輝けり

風花にやがて灯りぬ芝居小屋

粉雪ふる町賑はひて年歩む

寒牡丹活け旅人の来り去る

行年の大河をはさみ宿二つ

波除に大年の波静かかな

星空に居る大富士や除夜の駅