飛騨桑の硬骨たるが雪に立つ
雪嶺の大を数ふや十座余り
雪嶺の皓体雲の環をまとひ
霙るるや小蟹の味のこまやかさ
蟹提げて人霙れ来る三国かな
門に積む菜に降り溜まる霙かな
鴎啼き日日の霙に濡るる町
霰打つ暗き海より獲れし蟹
雪国の雪の止み間の淋しさよ
大幅の楷書に浮ぶ寒牡丹
懐手して萬象に耳目かな
猿橋の虚空にかかり冬日澄む
冬の水水車を外づれ豊かなり
停り合ふ汽車なつかしき雪の駅
主峯以下雪新たなる八ヶ嶽
雪嶺の紅を含みて輝けり
風花にやがて灯りぬ芝居小屋
粉雪ふる町賑はひて年歩む
寒牡丹活け旅人の来り去る
行年の大河をはさみ宿二つ
波除に大年の波静かかな
星空に居る大富士や除夜の駅