和歌と俳句

松本たかし

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

湯揉みせる唄よ湯音よ雪の暮

湯畑の湯花採る日や深雪晴

湯畑の湯気ゆく屋根の雪卸し

雪の荘湯川に臨み閉しあり

山川と湯川落ち合ふ雪深し

雪明り月明りして町眠る

紅葉ちる音ひびくらし厨子の裡

撞き終る捨て鐘一つ冬紅葉

山山の北面の雪濃しと見る

越の雪化粧つつある枯木山

雪山の立木の並び見の正し

緑金に見よや冬日のゆらぎ燃ゆ

白焔に冬日の玉の隠れ燃ゆ

白焔の縁の緑や冬日燃ゆ

温泉の池に雪山映り女体透き

白日とある白頭の枯尾花

塗火桶置けば映るや青畳

一人居て赤き炭火に執しをり

名園のきよらかに人乏し

池冰り佳木佳石の明らかに

冬深き樹石の姿晴れ渡り

捨て捨てし塵の五色の冬日かな

冬椿咲き休みゐて日脚伸ぶ