和歌と俳句

松本たかし

ひそかなる枯菊に年改る

正月や炬燵の上の朱短冊

返り咲く小米花あり門の春

虚子庵のいつもの部屋やお元日

正しくも時の歩みやお元日

水仙にかかる埃も五日かな

初富士に往来の人や富士見町

受けて来し七福神や置き並べ

すぐに寝る草の庵の宝舟

風寒し破魔矢を胸に抱へ来る

餅花やもつれしままに静まれる

餅花や捨てんとしつつ美しき

輪飾を掛けて使はず外厠

鬚はねてはなはだ長し飾海老

初暦翁格子の襖かな

はるばると慕ひ来りし賀客かな

虚子庵に不参申して寝正月

白洲ある古き舞台の能始め

裃の古びし老や能始め

能始め着たる面は彌勒打

福寿草一鉢置けば座右の春

取散らす几辺なれども福寿草

日の障子太鼓の如し福寿草

正月も古りつつ福寿草たもつ