今日会へばまた散り散りや冬の雲
預けある鼓打ちたし冬の梅
春待つや舞扇なく鼓なく
借りし書の返しがたなく春隣
霜柱倒るる光明滅し
霜柱次第に倒れいそぐなり
霜の塔荘厳なりし倒れ消ゆ
霜の塔日日玲瓏と生滅し
安らかに住めるに似たる障子の灯
桑枯れて天龍河原遠白く
日に向いて葉を起こしをる冬菜かな
飯食うてしのぐ寒さや昨日今日
頭上過ぐ嘴脚紅き都鳥
行き消えて又行き消えて枯野人
山垣やひとり雪置く遠浅間
火の山の雪の浄衣や嶺嶺の上
枯桑に雪ありそめて利根細る
雪山と降る白雪と消し合ひぬ
快晴の雪嶺を観る欄の雪
軒氷柱下がり雪嶺突き立ちぬ
雪嶺の最高峰に向へる眼
雪嶺の歯向ふ天のやさしさよ
雪嶺の無言に充てる太虚かな
空の紺氷柱の瑠璃に深雪晴