和歌と俳句

松本たかし

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

大嶺の集まり眠る國境

山眠る最中に我を現じたる

山眠り激流國を分ちたる

天龍へ崩れ落ちつつ眠る山

冬山の我を挟みて倒れ来る

冬山の加へ来る威の下に在り

冬山の拒み塞げる行手かな

冬山の我を厭ひて黙したる

天龍の落つるを阻み眠る山

錐の如つつ立つ朽木谷寒し

冬山の囲みを破り射す日あり

行き行きて冬山の威の許すなき

天龍も行きとどこほる峡の冬

冬山の威に天龍も屈し行く

炭竃のそこは燃えをり山の駅

嶺晴れて炭焼く煙数ふべし

雪嶺に三日月の匕首飛べりけり

スケートの左廻りや山囲む

炬燵して在れば汝が来て施物かな

寒梅に蒔絵師の根つづくかな

梅寒し研げば現る金蒔絵

日脚伸ぶ殊に港の浜通り

寒潮の紺流れをる島門かな

探梅や名もなつかしき化粧坂

焚く榾の火相しづけき大爐かな