大嶺の集まり眠る國境
山眠る最中に我を現じたる
山眠り激流國を分ちたる
天龍へ崩れ落ちつつ眠る山
冬山の我を挟みて倒れ来る
冬山の加へ来る威の下に在り
冬山の拒み塞げる行手かな
冬山の我を厭ひて黙したる
錐の如つつ立つ朽木谷寒し
冬山の囲みを破り射す日あり
行き行きて冬山の威の許すなき
天龍も行きとどこほる峡の冬
炭竃のそこは燃えをり山の駅
嶺晴れて炭焼く煙数ふべし
雪嶺に三日月の匕首飛べりけり
スケートの左廻りや山囲む
炬燵して在れば汝が来て施物かな
寒梅に蒔絵師の根つづくかな
梅寒し研げば現る金蒔絵
日脚伸ぶ殊に港の浜通り
寒潮の紺流れをる島門かな
探梅や名もなつかしき化粧坂
焚く榾の火相しづけき大爐かな