冬山の陽にあり涙あふれ来る 鷹女
いのち子に分たん祷り冬山に 鷹女
冬の山禅師の墓の並びけり 耕衣
妻隠や冬山われに距離ちぢめず 不死男
冬山の我を挟みて倒れ来る たかし
冬山の加へ来る威の下に在り たかし
冬山の拒み塞げる行手かな たかし
冬山の我を厭ひて黙したる たかし
雨ためて冬山の径つくるなし 普羅
冬山や径集りて一と平 普羅
色変へて夕となりぬ冬の山 普羅
ユヅリハもアスヒも触るゝ冬の山 普羅
蛇にあらず冬山の路生きてあり 普羅
貨車の扉の筑紫冬嶽みな尖る 多佳子
冬の山たふれむばかり今日もあり 青畝
冬山くらしうつむき照らす五日月 草田男
冬山に両三歩かけ引返し 虚子
冬山の線が落合ふ杉暗し 秋櫻子
冬山のふかき襞かなこころの翳 龍太
冬の山虹に踏まれて彫深し 三鬼
白樺を透く夕光に冬の嶽 蛇笏
歳月をたのしまざりき冬の山 蛇笏
冬山にピッケル突きて抜きしあと 誓子
冬山を石の落ちゆく音落ちゆく音 誓子
鳶鴉左右にわかれ冬の山 みどり女
冬山に轍や還らざるごとく 波郷
暗を見る小石嵌まれり冬の山 耕衣
冬の山粧へる隈残しけり 青畝
恵心堂抓めるほどや冬の山 青畝