蔦枯れて緋縅鎧わが夢に
椿咲き山冬濤をめぐらしむ
冬山の陽にあり涙あふれ来る
いのち子に分たん祷り冬山に
ひとり子の生死も知らず凍て睡る
胼割れの指に孤独の血が滲む
藷粥や一家といへど唯二人
あはれ我が凍て枯れしこゑがもの云へり
茶の花の盛り流人の如く佇つ
寒林檎音たて食うべ婚期まだ
鳥の名のわが名がわびし冬侘し
寒月にもつとも近く居ると思ふ
階登り来しが寒月よそよそし
うちかけを被て冬の蛾は飛べませぬ
女侘し冬木を恋へど片恋の
貝族の呟き冬はこれからです
冬川とわびし男の饒舌と
冬川や未練は水尾と失せがたく
冬雲の行方を誰が知りませう
山鳩も噂も遠くみぞれけり
中年に日月速し鳰
背信や卍こがらし前髪に
凩の明日へしづかに瞳をつむる