和歌と俳句

三橋鷹女

空高き星夜となりぬ花八ツ手

初冬のふたたび赤きカンナかな

枯蘆の入日ぬくとし浮寝鳥

鳴くや落葉踏みくる茶の帽子

かみおきやリボン結ひたるちよろちよろ毛

茶畑の土にまぎれぬ寒雀

岩襞にたんぽぽ咲けり冬の海

赤靴の四五人若し探梅行

笹鳴と風花と手の灰ふるひ

萩枯れて頬白訪はずなりにけり

棕梠の葉の氷柱房なす朝かな

お茶咲くやさむざむとして畝の色

冬帽に汝が装身具みな漆黒

水仙花九曜の星つらねけり

水仙花咲きたけて鰤うまきころ

田楽に酔うてさびしき男かな

霜折れの道のべを行くソフトかな

ひそやかに柊花ちる霜日和

明神の鈴鳴り交へり年の市

百八の鐘鳴り止みぬそとは雪

鴛鴦二つ夜々蒼空をゆめみけり

つはぶきはだんまりの花嫌ひな花

暖炉昏し壺の椿を投げ入れよ

暖炉灼く夫よタンゴを踊らうよ

冬来るとあたりけだものくさきかな