魂痩せて真冬の夢を見つづけし
人は喪に真冬のいろを上げし石蕗
笹鳴に逢ひたき人のあるにはある
笹子鳴きこの帯留が気に入らぬ
短日の燃ゆるひとみのギター弾き
短日や我れもこころのギター弾き
凍てを行き兵を思へり誰もが思へり
凍ての道いくさのことは口に言はず
暖炉燃え牡丹雪とはかかるもの
雪粉雪受話器をながれ来たるこゑ
水涸れて人は祷りのあかつきを
水涸れて日月人を隔てけり
石蕗咲くと凡俗出でて彷徨へる
咲き溢る八ツ手籬を出でざりき
冬来る高階の扉の押せば開き
初冬の高階に住みて人胃弱
高階を人と降り来て冬夜の灯へ
野は初冬少年の歩に合はせ歩し
簷凍てて我が誕生の日に遭へり
大年のしろき障子にゐて想ふ
大年の燈の燦々と子のねむり
機翼現れ吾子の口笛北風に和す
北風駈る草原吾子を駈らしめ
少年に別るる吾子となりて北風に
冬野来て吾子の背丈の低くはなし