生き地獄血の池地獄氷り初む
縋るものなし寒風に取り縋る
積むや雪無言女佛の息荒び
心中に火の玉を抱き悴めり
北風に眉引きいのち死なざりき
枯蔦の交叉幾筋何為さん
寒木瓜の天を弛ませ誕生日
煮凝や指紋は常に悪に似て
寒木瓜の花蕋凝つて供華となる
冬同じ色にポストと消防車
昼月櫛形鮟鱇の肉吊し斬り
枯蔦となり一木を捕縛せり
もろもろの落葉しはてぬ骰を振る
冬に入る見分け難きは枯木と死木
眼光の枯向日葵となりて佇つ
枯向日葵となり千手観音像となる
影に影磔け枯ひまはりと在り
夕日が来て枯向日葵に火を放つ
向日葵の白骨人柱ともならず
遠景に枯木華やか急ぐなよ
手の触れし箇処より氷柱痩せ始む
死の薔薇となり氷柱に透きとほる
わが行くにどの寒木も躯を躱す