和歌と俳句

三橋鷹女

冬菊の朱を剪り惜しみ誕生日

一輪の侘助とあり燈をとぼし

木の葉髪うたひ歎くやをとこらも

木の葉髪忿りねげきてせんもなし

青年のあばらを出でて冬の蝶

昏れて無し冬木の影も吾が影も

人の世へ覚めて朝の刻む

終止符をこころに遠く冬木立

クリスマス前夜の鐘をもたいなく

クリスマス胡桃の樹肌あたたかに

水仙を剪つて青年母に詫ぶ

友情の花咲きこぼれ一日雪

石塊に水仙挿して嗚呼わが墓

小説のごとき邂逅冬晴れ

冬天へらくがきをして昏れてゐる

鍵穴をが覗けり語らずも

炉火紅く中年水のごとく澄む

脚組んで極月の灯の高階に

早梅や老いざるはなき幼な友

生まれ出て冬暁鷹の名を賜ひき

誕生日八方の天昏れ早く

母老いぬ枯木のごとく美しく

故郷は冬鵙ばかり友等亡く

このわれに友無きごとく冬鵙も