和歌と俳句

クリスマス 降誕祭 聖誕祭

裏町の泥かゞやけりクリスマス 信子

聖夜讃歌吾が息をもて吾涜る 多佳子

燭の火と炉火が燻る聖歌隊黙し 多佳子

層見せて聖夜の菓子を切り頒つ 多佳子

卵一つポケットの手にクリスマス 三鬼

甘藷蒸して大いに啖ふクリスマス 三鬼

臥生活のラヂオを聴けばクリスマス 草城

をさな子も深雪を帰るクリスマス 草城

馬画き厩めきけりクリスマス 青畝

新しき褞袍を着るやクリスマス 草城

降誕祭町にふる雪わが家にも 

クリスマス馬小屋ありて馬が住む 三鬼

クリスマス藷一片を夜食とす 三鬼

クリスマス貸間三畳の奇蹟なし 三鬼

隣人の戸の音越しに降誕祭 草田男

蔓のからみし迹ふかき杖降誕祭 草田男

降誕祭睫毛は母の胸こする 草田男

クリスマス肋除られて打臥すも 波郷

粧ひて胸うすき者よクリスマス 波郷

へろへろとワンタンすするクリスマス 不死男

天に星地に雪原やクリスマス 石鼎

クリスマス前夜の鐘をもたいなく 鷹女

クリスマス胡桃の樹肌あたたかに 鷹女

ことのはは終わりぬ聖樹灯りけり 草田男

前途永き妻に加護あれ降誕祭 草田男

病床を脱けゆきし者よクリスマス 波郷

息安く仰臥してをりクリスマス 波郷

贈られし金敷き臥すもクリスマス 波郷

クリスマス硝子越しなる馬打たる 不死男

白糖を嘗めクリスマス礼拝す 静塔

クリスマスゆき交ひて船相照らす 楸邨

クリスマス遠き木枯の宙は覚め 楸邨

この町に墓地を買ひけりクリスマス 青畝

重なれる聖菓の塔を解きて食ふ 誓子

外套を山羊が銜へてクリスマス 静塔

聖夜とやヒロシマ環礁実験図 草田男

拳動かし背の子は寝ねず聖夜祈る 静塔

クリスマス更けてしたたか溝にほふ 静塔