寒灸や中年の膚しみだらけ
寒灸や黄色人種肌をぬぎ
筋骨に灸火の熱さ突きささる
もぐさの火をみなの肌も冬ざるる
冬の灯をはやばや点けてわがひとり
締め忘れられて師走の古襖
極月や裸の炬燵畳の上
寒卵われのみに割る妻の胼
木枯やもろにみだるる大煙
大霜におどろいてゐる妻のこゑ
厚氷妻の非力を刎ねかへす
夜番の柝ひびく月光世界かな
やはやはとはだへを洗ふ柚子湯かな
まどろみて待つや柚子湯にゐるひとを
をさな子も深雪を帰るクリスマス
臥生活のラヂオを聴けばクリスマス
臥生活の四肢たひらかに年暮るる
除夜の鐘わが凶つ歳いま滅ぶ
寒牡丹この日崩ると記憶せむ
妻の手のいつもわが辺に胼きれて
華燭の日はるかになりし妻の顔
妻の息白し寒厨氷点下
ラヂオさへ黙せり寒の曇り日を
大寒や襟巻をして褥中に
夕しづの寒の庭掃く音きこゆ